中国の介護 最新情報

コロナ後、6年ぶりに中国北京を訪問して、介護施設を視察したレポートになります。

 

■福祉データの実装 日本にはまねできないスピード感
社区での、ITを使った情報管理が介護の現場で実装されており、IT先進国である中国の取組みの確かさと良いものはスピード感をもって実現していく国の体制について、非常に素晴らしいと思いました。

■公建民営施設制度の変化と高齢者福祉にかける政府の本気度
公建民営で既存の政府の建物を介護施設に改築して、民間介護事業者が運営を行っているが、以前北京で視察した時は、民間への建物賃料の設定が高額で介護経営に支障をきたしているという状況だったが、今回見学して施設では、費用に安価な建物賃料設定がなされていて介護経営の安定性が保たれており、政府が本気で公建民営で介護インフラを展開していこうとしている姿勢がよく分かった。

■海外で学んだ人材が介護ビジネスに参入 →介護ビジネスは自国で完結できる状況まで進捗
介護施設のリーダーが海外の大学で学んで、母国に戻って介護事業に進んで取り組んでいる姿をみて、今までは日本の介護運営を参考にしていた時代から、海外で学んだ新しい人材が中国式の介護オペレーションを自ら知恵を絞って考え実行している状況は、すでに中国の介護ビジネス自体が自国で完結できるステージまで進んでいるのを感じた。

■福祉のコストパフォーマンスを理解した施設経営
認知症ケアについても、施設で試行錯誤しながら出来るだけコストのかからないオペレーションを実施していて、持続可能な社会保障制度にも貢献している。
日本の場合は介護保険制度があり、介護サービスの提供コストについては国が定めたサービス料金に沿って行っているので、介護現場にコストパフォーマンスの考え方がなく、高コストの介護サービスがあたりまえになっているのとは対象的だった。
自分たちで試行錯誤しながら、コストパフォーマンスを重視しながらも利用者にとって良い介護サービスを提供しようと知恵を絞っている状況は、日本も見習わないといけないと思った。

■施設の介護リーダーのスキルの高さと中国式介護のオペレーションメソッドの確立
また、北京長友養老院では、介護リーダーが看護師資格をもっており、医療的な知識も活用しながら認知症ケアのオペレーションを作り上げているのを見て、こういった医療現場でもスキルの高い人材が、介護現場で認知症ケアにチャレンジして実績を積み上げていいるのは、介護ビジネスが単なる高齢者の生活の延長線上のサポートに留まらず、医療的なスキルも活かせる高度なオペレーション事業として認識されているのがよく分かった。
北京と上海の介護現場では、すでに中国人の文化と生活習慣に基づいた中国式介護のオペレーションメソッドが確立しつつある。
また、施設介護やデイサービスセンター等においても、公建民営で政府が介護インフラを整備することで、民間が参入しやすい環境ができており、持続可能な高齢者福祉において、ある意味、日本よりも進んでいる状況が確認できた。

■持続可能な社会保障制度
日本の施設介護については、厚生労働省のゴールドプランで数十兆円という国家予算をかけて、新しく養護老人ホーム等を整備したきた。
また、2000年から介護保険制度を実施し、高齢者から介護保険料を徴収し、要介護認定を受けて保険給付を受けるという受益者負担で財源を確保してきたが、当初3兆円規模で始まった年間給付金も2023年には11兆円まで増額し、持続可能な社会保障制度として限界に近づいている。
中国は、膨大な人口の高齢者をかかえ、日本の制度を参考にしながらも、介護事業者にコスト感覚を持たせて持続可能な高齢者福祉制度の構築へ向けて、本格稼働を始めている。

2025年08月08日